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arya

黒い十人の女
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2002.04.05
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97年にリバイバル公開され、「こんなモダンな日本映画があったのか!」と話題になった、市川崑監督1961年大映作品「黒い十人の女」。
いや、ぶったまげた。めちゃくちゃ面白い作品ですよ。時代背景は確かに40年前なんだけど、ストーリーやセリフ、キャラクタの描き方、映像センスは、今観ても最先端!
昭和30年代の崑さん作品がスゴイのは何本か観て知ってたけど、「黒い十人の女」を今観たことで、リスペクト度はリンチやカーワァイといったカンヌ映画祭常連監督さんたちをブッちぎってしまいそう。

ストーリーをかんたんに紹介するね。
時間に追われてばかりいながら実はこれといって何もしていないテレビ局プロデューサの風(船越英二)。彼を取り巻く本妻(山本富士子)、妾(岸恵子)ほか10人の女たちは、優しいけれど無責任で軽薄な風との関係をどうにかしたいと思いつつ、風が他の女と一緒にいるところを見てしまうと、つい嫉妬で離れられない。彼女たちは、互いに情報交換やさぐりを入れながら奇妙な連帯感を持つようになり、"風を殺す"計画を練り始めるが…

何かしようとすると「あ、あれ忘れてた」と思い出し、その矢先また別のことをしている風って男。いろんな女と関係をもつことにたいした意味を感じていないし、物事すべてを深く考えもしない。やたら忙しい業種にはいるキャラだよね。今だったら広告代理店とか?40年も前に、今観ても十分すぎるリアリティで演じた船越英二がスゴイ。マストロヤンニ風の軽さと情けなさで、芝居してるとは思えない演技。

作品の魅力をデシベルアップさせているのは豪華映画女優たちの競演。山本富士子、岸恵子、 宮城まり子、中村玉緒、岸田今日子…。目が眩みそうなキャスティング(コワイ)。画面の中ではみなさん若くて美しいし、セリフまわしや表情の作り方など演技が絶品。まさに<映画女優>の圧倒的な存在をみてしまった感じ。
マダムな口調がお気に入りの僕としては、山本富士子と岸恵子の掛け合いなんて、もうゾクゾク!「あなた妾でしょ。あ〜ら、ごめんなさい。恋人だったわねっ。」

そして、崑さんのモダンな映像感覚ったら!斬新な構図。小道具や衣装のおシャレさ。タイトルロールの文字は手書きが当たり前だった時代に、黒地に反転写植文字を貼って見せているデザイン感覚!ジャズを使った音楽もイカしてる。なにより、冒頭のタイトルロールとエンディングは、デビッド・リンチ的センスの先駆けだよ。
唯一古さを感じてしまうのは、音質の悪さ。僕はCATVで観たんだけど、DVDはドルビーデジタル(2chモノラル)なので、もうちょっといい状態なのかな。


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