┏━━━━━┓
arya

フリークスも人間も
┗━━━━━┛

INDEXへもどる

20世紀初頭のロシア。セピアカラーのお仕置き写真。ストッキングだけ身につけた若い女性が、むき出しの尻を老婆に木枝の束で叩かれている。「別冊太陽」で目にするような、匂い立つレトロ・エロティズムの世界。
この作品は、白夜のサンクトペテルブルグを舞台に、"お仕置き"を撮影する写真屋によって崩壊する2つのブルジョア家庭と、歌うシャム双生児の運命をとてつもなく美しいセピアカラー映像で描く。あわれ、少女リーザと双子の運命は…(予告編コピー)あああ…、たまらんっ。

タイトルや設定に惹かれて観たら、質の高さと面白さにビックリしちゃった。カンヌ国際映画祭出品作と知って納得。アレクセイ・バラバノフ監督は、本作のような芸術作品だけでなく、ロシア国内No.1ヒットの娯楽作も作っちゃう映画界注目の才人。

盲目の美人妻が、部屋に忍び込んだ男の「声」に恐れながら従い、自らのスカートをたくしあげ下半身を露わに立つ。魅惑的なこのシーンこそ、この映画の楽しみ方だと思った。
お人形遊び。あまりに自分が生きる日常とは違う世界だから、登場人物の特殊性、翻弄されていく様が、散らかしたお人形を前にいじわる気分でお遊びしている感じに近いんだ。シャム双生児の片方をアル中にしたらどーなるだろー?とか、じゃあここでも少女リーザは尻を叩かれてあえぎ声を出してたりぃとか。ついでに盲目の美人妻も見せ物にしちゃえ、とか。ふふふ。

フェティッシュな展開と並行して語られる、見せ物として人気を博す歌うシャム双生児。妙に不安定な歌声と独特なメロディーが耳に焼き付く。
目に見える「奇形」と内なる見えない「奇形」。でも心は純粋!というアメリカ映画的なアプローチではなく、どちらの「奇形」も結局はそこに縛られてしか生きられないという突き放し方。時代や強い他者に翻弄されるのではなく、自らの資質によって流されていく運命。

タイムスリップしたかのようなサンクトペテルブルグの街並みが美しい。あらゆるディティールが前時代的なロシア的イメージに埋め尽くされている。
ゴージャスな装丁のフェティッシュ写真集をみているような映画だった。そのテがお好きな方にはおススメっす!

原題:of Freaks and Men 1998年ロシア DVD:アップリンク


INDEXへもどる
TOPへもどる
Guestbookに投稿
2002(C)TZK Hideo