一生ひとりで生きていく覚悟。自分の人生にどこか諦めを抱いていた2人のゲイ男性とひとりの女。ふとした出会いがかみ合って、もう一度人と触れあう喜びを感じ、家族を持つという可能性を模索する。もたれかかるような関係でなく、自分の意志でつながっていこうとする自立した関係性。
高校生を瑞々しく描いた前作「渚のシンドバッド」(浜崎あゆみが最高)から、一歩オトナの世界に踏み込んだこの作品。
敵とまではいわないまでも好意を持たれていない現実に対して、自分はどう生きるべきなの?という畏れと孤独にある登場人物。シリアスなことではあるけど、決して痛いだけでなく、自然な会話としぐさから生まれる絶妙なコミカル感。そして言葉では語れない<明日への勇気>を与えてくれる映画になっているのがステキです。
橋口監督作品では、役者が芝居しているとは思えないほどの自然さが妙に爽やかなんですよ。題材として理解して描きましたという恩着せがましさのない、自然なゲイ・カップルの姿。性的妄想対象としてではない妙にリアルな女性の姿。
貴公子っぽい役ばかりの田辺誠一が、こんな無防備な表情をみせるなんて、現実ではよほど親しい間柄でないと目にできなかっただろうって感じ。
やさぐれた雰囲気の中から純粋な生命感を感じさせる片岡礼子のカッコよさや、気遣いを受けなくても自分は大丈夫、という長男気質な高橋和也のいじましさ。
彼らが生きている様をそのままカメラに納めたようなシーンの合間に、ストーリーを動かすキーフレームのようなエピソードが挟みこまれる。ドラマを成立させるのに、自然であることとリアルであることは、微妙に違うことを橋口監督は心得ているね。しっかり演技をしている兄嫁役の秋野陽子がいいですよ。凛とした寂しさがこんなリアルに出せるなんて。
人の姿を加工なしで見せるような長回し撮影。だから、人物の背景にまで自然に目が行きます。彼らが暮らしている部屋が、写真集「TOKYO STYLE」を観ているような、生き方や趣味が生々しく伝わってくるような部屋なのが楽しい。物語の登場人物でなく、人の生活を覗いているかのようなドキドキ感も映画のスパイスになってますね。
この映画が内容的にいい作品であると同時に、僕が感じたのは、「映画を作ることってステキだ」ってこと。映画作りへのポジティブなこんな気持ち、久しく忘れてました。(2002.5.4 渋谷シネクイント)
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