原作がつまらないと誰もが言う「催眠」。読むだけ時間の無駄とゆいに言われていたので、原作がどういう内容だか知らないんだけど、映画版「催眠」はホラー映画としてけっこう楽しめました。カルトになった「Night Head」のスタッフが作った映画ということで、映画の出来よりもこのテの素材をどう料理するのか?ってことに興味があってね。最初の予告編には脚本:飯田譲治とあったのに、いつしか名前がなくなってしまったのが、映画化にあたってのストーリーづくりに苦労したことを伺わせます。
映画はね、良くも悪くもテレビ・ドラマっぽかった。宇津井健の大映ドラマシリーズのような濃い演技、いかにもセットという感じの美術、コテコテのエフェクトを使ったタイトル。「セブン」や「CURE(キュア)」のような、映画自体に潜む狂気が映像や空気感を支配していくタイプじゃないんだよね。テレビドラマのように、作り手は一歩引いた立場にいて、エンタテイメントとして画面を作っているって感じ。
そういう門構えがあったから、手垢のついたアイデアでもストーリーに破綻が起きずに、ホラー映画として落とし前がついているんです。
引いてはいけないジョーカー的人格が、人間を越えた悪魔のような存在って点がおもしろかった。人間の中には悪魔がデフォルトで装備されてんだねぇ。
主人公の吾郎ちゃんは、催眠療法の正しい使い方について力説し、催眠を見せ物にしている男と対立します。辛い記憶を消去することで、心の治療に役立てることができる催眠療法。それが本当にいいことかどうかは置いておいて、僕もおクスリのせいで記憶にない行動を起こすことが多々あるんだよね。夜中に起き出して、あんぱんを食べる話は前にしたよね?
そう考えてみると、この「あんぱん」というのが、僕にとっては何かのキーワードになっているようなんです。
毎日の残業を支えているローソンの弁当。たいていは弁当とヨーグルトと飲み物というセットなんだけど、時々あんぱんをプラスするんです。そのあんぱんは、会社では食べずに持ち帰ることがあります。で、帰宅してもうすぐ寝ようって時間になると、「そうだ!今日はあんぱんがあるんだ!」と思い出して一人でぱくぱく食べるんです。
なにか食べるものを持ち帰った時、僕はゆいと分けるか「おやつに食べなよ」とあげるのが普通なのですが、あんぱんの場合は、ゆいに分けることをはじめから考えずに一人で食べちゃうんです。ゆいとそのことを話した時、あんぱんの時だけにとる僕の行動は明らかに特異であり、あんぱんには何か秘密が潜んでいるのでは?という結論に達したのでした。
一体、あんぱんと僕の間には何があるのでしょう?こ、怖い。知ってはいけない自分の秘密に触れてしまいそうで。きっと催眠療法によってその謎は明らかになるのでしょう。でも、触れてはいけない人格が現れてしまったら…。人間じゃないモノ、ドラえもんとか…。
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