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エンド・オブ・バイオレンス 98-04-21

今日は恵比寿ガーデンプレイスで、写真展と映画をみてきた。
アートな一日ってヤツですね。なんだか、ニューヨークに行った時と同じようなことやっているなー、自分たち。


【メディアローグ-日本の現代写真'98】

メディアとより密接に関わり合いながら、新たな写真の役割を見いだそうというのが今回の展覧会のテーマ。
フィルムから写真家自身が印画紙に焼いたオリジナル・プリントから、どれだけ離れた作品なのか?という問いかけのようだった。
CD-ROMはすでにポピュラーな写真の発表方法だけど、特に今回に目立っていたのは、カラープリンターで出力された作品。 Photoshopの存在によって、ディスプレイ上の写真加工が万人のものになっているのに、デジタルを否定する写真家さんも多いもんね。 こうやって、デジタルを表現手段の1つとして全面的に肯定してくれるのは面白いね。
デジタルとの距離感をどうとるか?のもっとも分かりやすいケースが、所正則さんの作品。 Mdnやデューダの表紙などでおなじみの作風は、そのテの雑誌でデジタル写真の第一人者扱いされていたけど、実はごく最近まではブラシなどのアナログ処理によって仕上げていたらしいのね。 実際生の作品をみてみると、合成用のエレメントとして3DCGが使われてはいるけど、全体の処理はブラシだった。 う〜ん、騙されていたなぁ(^_^;

メディアローグ・プリクラ メディアローグ会場内に設置されたプリクラで。プリクラも写真表現の一形態ということか。


【エンド・オブ・バイオレンス】

ヴィム・ヴェンダースの新作は、どことなくデビッド・リンチ作品をインテリ風に料理したクールな作品に仕上がっていた。
事件はそこに存在するのだが、全体の輪郭が掴みづらいストーリーっていうと、いかにもリンチっぽいでしょ? また主演のビル・ウルマンと制作と美術が、リンチ映画の関係者だということも要因かもね。

バイオレンス・ムービーで知られる敏腕プロデューサーのマックスが、ある晩誘拐された。 しかし現場となった高速道路の高架下で発見されたのは、誘拐犯2人の死体で、マックスの姿は消えていた。 街中や衛星からの監視カメラをチェックしている元NASAの研究員は、囚われの身となったマックスがある時点で急に逃亡する映像を見ていた。ある時点に何が起こったのか? 研究員は、いろいろな方法を試みてその瞬間の映像を捉えようとするが…。 事件の起こる直前、マックス宛にFBIの極秘文書が電子メールで届いていたことがなにか関係あるのか?
捜査に熱中する若い刑事、スタントマンからマックスの制作する次回作に出演することになった女優、人形のような存在からエゴが育っていくマックスの妻、ギャングスター・ラップ歌手など、マックスと事件の周辺にいる人々の行動が淡々と描かれていく。
タイトルにある<バイオレンス>な描写は、一流の料理人によってキレイに取り除かれている。 それでもこの映画は、得体の知れない暴力と破壊を感じることができる。人が人を脅威に思うこと。そのこと自体がバイオレンスなんだよね。

ヴェンダース映画の映像は、メチャメチャ美しい。 この「エンド・オブ・バイオレンス」のスチール写真は、先にみた東京都写真美術館にも展示されていたんだけど、光と人の顔に落ちる影、構図がすっごくクールだった。 さらに映画本編は、どのシーンもスチールのようにキメまくっていた。
日常の静けさにたまらない孤独感を感じさせるエドワード・ホッパーの絵画にインスパイアされたという画面づくり。フレームの外で何かが起こっている気配と、どこか偽物っぽい現実が、実にうまく映像化されていたように思う。


【品川に住む弟】

この日夕方からは、品川駅から歩いて10分ほどのところに住む弟に会っていた。前回みたときよりも子どもも育っている。家族している空間と時間が、僕にとってはフィルターをかけたように実感のないものだった。
昼間のアートな時間と、その後の生活感。まるで「エンド・オブ・バイオレンス」のような、輪郭のない時間を流されていくかのような1日だった。


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