シャーロック・ホームズの作者であるコナン・ドイル卿と、伝説のマジシャン・フーディーニが活躍していた、第一次大戦下の大英帝国。
大人の男がほとんどいない劇場では、大人になりたくない少年・ピーターパンが上演され、子供たちに「妖精の存在を信じる?」と呼びかけていた。
田舎でごく普通の生活をしていた少女エルシーの元に、従姉妹のフランシスがやってきた。父がフランスに遠征したまま行方不明となってしまったからだ。
内気で繊細なエルシーと、強気で活発なフランシス。2人は、家の奥にある秘密の小川で遊んでいる時、妖精を目にした。
エルシーの兄は、12才で製粉工場に働きに出る前に肺炎で死んでしまっていた。エルシーの兄が描き貯めていた妖精の画。母は自分には見ることができなかった<妖精>の存在を、息子の思い出とともに封じ込め、哀しみを乗り越えられずにいた。 そんな母を励ますつもりで、エルシーたちは<妖精>の姿を父のカメラで写真に収めることを思いついた。
母が心の救いを求めるように天使についての講演に出かけ、さらに哀しみを深めて帰宅したその夜、妖精の写真を目にした。目から涙が溢れてきた。息子が見ていたものが実在していたことの歓びに。自分にも妖精を見ることができた歓びに。
天使について講演を行なった男の元に、どう思うか聞かせて欲しいと妖精の写真を手渡した母。
その写真はトリック写真の専門家から「本物だ」とお墨付きをもらい、コナン・ドイル卿の手元に渡ることになった。やはり息子を亡くしたばかりのドイル卿は、妖精の実在によって魂の救済を感じていたのかもしれない。少女の素性が分からないように配慮した上で、この写真をマスコミに公表することにした。当時一流の文化人であったドイルが本物だと保証した妖精の写真は、国中の話題となる。
対抗意識を持った記者が、写真はニセモノだと証明するためにエルシーたち一家を突きとめ、写真がどこで撮影されたかを公表してしまった。観光地となってしまった秘密の小川。妖精たちはもうどこかへ行ってしまっていた。
妖精について記した本の出版記念に、ドイル卿はエルシーたちをロンドンに招待した。少女たちは、傷ついた心を持つ人々に勇気を与える使者のように人気者となった。それでもエルシーは、フーディーニと心の交流を深めながら静かに自分を見つめていた。フランシスは、心の中でフランスから父が帰ってくるのを信じて待っていた。
ロンドンから帰ってきた夜、並べたベッドに入った2人は、大人になることと妖精を見られなくなることについて語りあった。「それでも大人になりたい」エルシーははっきりと言った。フランシスは、自分よりも人の心を思いやることが大人になることなのね、と呟く。
その夜、奇跡が2人の元に訪れる。妖精たちが森に帰ってきて、エルシーの眠る部屋を訪れたのだ。妖精の姿を幸福に満ちた表情で迎えるエルシー。そして、玄関先に男がやってきた。フランシスが飛ぶように玄関先に向かう。待ちこがれていた父が帰ってきたのだ。
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