リプリーを真似る僕
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僕はリドリー・スコット監督が作り上げた『エイリアン』1作目が一番好きだった。
叫んでも誰も助けに来ない宇宙空間を舞台に、ギーガーの暗黒美術世界を映像化し、B級SF的設定をシャープで品性のあるホラー映画に作り上げていたからだ。

『エイリアン』シリーズのファンといえば、ジェームズ・キャメロンの作った『エイリアン2』のテイストを求めている人が多いように思う。
ストーリー・テリングのうまさ、アクションのうまさ、母性と母性の女の戦いというテーマの新鮮さが、ハイテンションに凝縮されていた2作目。状況は絶望的なのに、ひたすらポジティブでタフなリプリーの姿勢が、続編というギャップを乗り越えて大成功に導いた。

だから、1作目の鬱蒼とした閉鎖空間を再現しようとした『エイリアン3』に激怒してしまう人が多いのだろう。ヨーロッパ映画的な絶望感に支配されていて、宗教や祈りといった精神的なものにしか救いを見いだせない状況設定。ここでリプリーは、戦い続けてきたエイリアンを自らの体に宿し、行き場のない母性に決着をつけることになる。これはアクション・ムービーではなく、生に関する精神的なSF映画だった。

さて、3作目のテンションの低さがあったからか、世間では4作目の期待が薄かったように思う。ウィノナ・ライダーが出演することくらいしか話題にならなかったしね。
でも僕は、あの『ロスト・チルドレン』の監督/スタッフ・チームが制作するとあって、これまで以上の期待をかけていたのだ。ストーリーがチャチでも構わない、美術と画面だけでも、凄いエイリアン的世界をみせてくれるだろうと。

結果は、期待以上の出来だったと思う。
1作目や『ロスト・チルドレン』ほどではないが、ディティールにこだわったエイリアン的な世界を構築してくれたし、気持ち悪さがしっかり出ている。
なにより、250年以上たってはじめてリプリーが地球に戻ってきたのだ。ストレンジャーとして。実にSF的で感動的なラストである。