ヨーロッパ拷問展

1997-5-4



ヨーロッパ拷問展の展示品や図版を豊富に収録した目録が出版されました。
『拷問の歴史』
監修:川端 博
発行:河出書房新社
価格:2,200円



■明治大学刑事博物館
ヨーロッパ拷問展情報


「ヨーロッパ拷問展」…なんて魅惑的なイベントなんだ!
情報誌で紹介記事を目にした瞬間から、越えてはならない一線を踏み出すかのような胸のざわめきを覚えたのだった。

●拷問というと、その陰惨さでは、東の中国、西のフランスが有名だよねー。どっちもに対して並々ならぬ意欲を持っている点で、内臓感覚が発達してしまったのかなぁ?

●さて。時代は中世ヨーロッパ。宗教が支配する暗黒時代。悪天候や疫病からはじまって、うまくいかないことは、すべて悪魔の仕業にされていた時代。
とにかく神の存在が絶対でしたから、神のご加護を受けられない自分なんて認められなかったと。よくないことは悪魔、とりわけ集団から浮いた存在のせいにしなくては、不条理だったわけですね。よかった、自分が生きているのが現代で(^_^;

どういったヤツが悪魔の使いで、どういう悪さをするのか?当時の博識者さんが先を争って、その設定をしたんだよね。魔女はホウキにまたがって空を飛ぶなんて突飛な発想も、そういう偉い人たちが悪魔学と称して、創造したもの。
偉い人がホラ吹きなんだもん。「あの人魔女よ」なんてレッテル貼られた一般人は、偉い人のホラを正当化するために、数々の拷問で無理矢理ホラを自白したんだもん。救われないよねー。

●神の名を借りて行なわれた悪魔的展示品には、とにかく血の臭いが染み込んでいたような気がする。
霊感の強い人は、入場すらできないでしょう、きっと(^^;
徐々に体を破壊して、なおかつ苦痛を長引かせる工夫と器具の数々には、尋常でない悪魔的イマジネーションのエネルギーを感じました、僕は。

●展示品について、印象に残ったものを書き留めておくね。

まず、小物類では、ひいらぎの葉を模したチェーンでできた鞭、短刀をしこませた十字架、先端がワニの頭部に形づくられた去勢するための道具(ワニに喰いちぎられるような感じになるわけだね)、などが造形的に素晴らしかった。
あと、乳首などを挟むためのペンチなんだけど、先端部と柄の部分にシンメトリーをわざとはずしたねじりを施してあって、その美しさは、MoMAに収蔵されててもおかしくないほど!
一緒にいた友人たちと、「カッコいいぜぇ〜」「さすがイタリアン・デザインね!」などと不謹慎な感想を飛ばしながら、目を爛々と輝かせておりました(笑)。

宗教審問異端撲滅に使用された器具のポイントは、とげ
過剰なまでに装着されたとげは、体に苦痛を与えるだけでなく、視覚的な恐怖を与えていた、というのに納得!とにかく見た目で痛そうなんだもん。
このとげのオブジェクトは、さまざまなバリエーションで展開されていたよ。

「頭蓋粉砕器」も印象的だった。
万力のような形をしていて、上部にヘルメットのようなものがついてるのね。
そのヘルメットの内部にはぎっちりとげが装着されていて、ぎりぎりと頭部を締め付けていったみたい。さらに、顎を固定し頭を上から圧迫を加えていくから、たいていは顎が先に砕けちゃったそうで。その顎を固定させる部分なんだけど、顎の形にくぼみがあるワケではなく、ただの真平らな鉄棒になっているの。使い勝手が悪そうで残酷さもひとしお!

体を宙づりにして、肛門を巨大な四角錐の頂点に食い込ませる大がかりな道具は、イマジネーションが先行してしまって、ほんとにうまくいったのかな〜?と疑問に感じる一品だった(^_^;

ちょっとおマヌケっぽく感じたのは、足の裏を山羊に延々となめさせて、皮がはがれるまで続けさせるという、究極のくすぐりの刑。

今回の目玉でもある「鋼鉄の処女」は、恐怖のイマジネーションをドラマにまで昇華させた、ずっしりとした存在感のある一品でした。
拷問の1プロセスに使われるツールが多い中で、これ1つで完結した機能をもつ「鋼鉄の処女」は、ギロチンとともにダイレクトに血を感じさせるものでした。
ほかのはどちらかというと、内臓を感じさせるものが多かった。

展示品の最後を飾るのは、「同性愛者を処刑するのこぎり」
のこぎりといっても、歯のピッチが大きくて、木のような固いものは絶対に切れないだろうというもの。
受刑者は逆さ吊りにされ、股の間から首までをこののこぎりで切断されたらしいんだけど、切るというよりほとんど摩擦で裂いていく感じだったんじゃないかな。
それだけでもひぃ〜って感じなのに、念が入っていることに、頭を逆さにすると血が脳に集まって、苦痛をいつまでも感じつづけるらしいんだ。よくそこまで考えたもんだ!

●つーことで、拷問展について長々と書いてみましたが、この展示会には<人類の権利・自由を考える>というサブタイトルがついているんだ。
う〜ん。そういうオチに持っていくにはかなりムリがあるかも…。
キリスト教世界の負の歴史を思い知るには、日本という国は不適切だし、造形と行為の奇異さにばかり目を奪われてしまうけど、人間の残虐性を造形で思い知らせるには充分なものだと思うからね。
ただ、考えるきっかけにはなったと思う。

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