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映画『エンゼル・ハート』を読む[6]

2009 年 9 月 6 日 TZK

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『エンゼル・ハート』のストーリーを、字幕と〈画面〉から私が読み取った内容で、追っていきます。このページでは、ハリーとエピファニーが親しくなっていくシークエンスから、教会の中でサイファーに調査報告を行い血が降る部屋で2人が激しく性交するところまでを紹介します。

エピファニー2

停車したバスから降りてくる3人の女の中に、エピファニーがいる。
エピファニーが村の水道ポンプがあるところまで歩いてくると、そこにランニングシャツ姿のハリーが左足を伸ばして座っている。腰に手をあて、声をかけるエピファニー「どうしたの?」
「犬に噛まれた」
「それで何の用?」
「まず服を洗濯したい」
歩き出すエピファニー。ハリーは足元に丸めて置いたシャツを拾いあげ、後を追いながら彼女に話しかける。「エピファニー。エピファニー、尋ねたいことがある。トゥーツとお祭りしてた夜のことだ。ニワトリを振り回してさ。盛大にやってたな」
「いけない?自由の国よ」
「ニワトリは困る」
エピファニーはついてくるハリーに少し顔を向けて「苦手だと言ってたわね」
「エピファニー、トゥーツは死んだよ」
立ち止まるエピファニー。
「聞いたわ」
隣に立つハリーは、彼女の腕に触れて「君の仕業か?」
ハリーの手を振り払い「違うわ」
車が通りすぎるのを待って、2人は道を横断してくる。
「ぼくが彼に会うと知って、君があのニワトリの脚を届けたんだろう?」
「彼、おしゃべりだから」
「だから口をふさがれて死んだ」
歩き続けるエピファニーの腕を掴むハリー「奇妙な宗教だ」
「十字架だって奇妙なものよ」エピファニーはそっけなく答える。
「ニワトリならいいのか」
家の玄関前で向き合って立つハリーとエピファニー。
「私たち人殺しなんかしないわ」少しおいて「ジョニーは?」
ハリーは覚えていてくれたことを嬉しく思った。
「私の父よ」
真顔になるハリー。
「ミンス!」エピファニーは見知らぬ名前を発すると、家の玄関から子どもと女性が姿を見せる。「もう少し子供を預かって」
ハリーは、手を右の目にあて、俯いたまま口を開く。「何か隠していることがあれば、話してくれないか」
「何もないわ。ジョニーは戻らなかった。ママは待ちながら…、死んだわ」
また歩き出すエピファニー。ハリーもあとにつづく。
「エピファニー、この辺には死体が多過ぎるよ。君を守る人はいるのか?」
その言葉に立ち止まるエピファニー、向き合う二人。
「ご主人は?」
「いないわ」
ハリーはエピファニーの髪に触れながら「君の目はとても美しいな」
さっと身を引いたエピファニーは、触れられた髪を自分でなでる。
「ほんとだよ、きれいだ」
エピファニーは俯く。
「君の心の中まで透けて見えるようだ。…怖いのか」
「平気よ」
エピファニーはまた歩き出すが、ハリーは追わずにそこに立ち止まる。
そのまま振り返らないと思わせておいて、振り返ったエピファニーは「何かあったら電話ね?」とハリーが別れ際に言う言葉を先回りする。
うれしそうな笑顔になったハリー「何かなくても」
歩き去っていくエピファニーに向かって、念を押すように、「いいね?」
エピファニーはちょっとだけ振り返って、返事を示す。

ハリーとエピファニー

エピファニーとハリーが、歩いては立ち止まり、歩いては立ち止まりしながら会話をするシークエンス。語られている内容は、ジョニーは父親であること、トゥーツにニワトリの脚を送ったのは彼女であること、という真相の一部が明らかになるもの。
でも画面はまるで、「ハリーのピュアラブ」とサブタイトルをつけたくなるような、彼女に対して娘に接するかのようなハリーのピュアな表情がいいですね。また心が氷解していくようなエピファニーの最後の仕草も、緊張感のつづく展開の中でほっとさせるものがあります。

サイファー:教会の中で

石造りのアーチ型をした暗い回廊を、シルエットになったハリーがびっこをひきながら歩いていって左折する。
目の前の階段に、白人で金髪の少女が人形を抱いて座っている。
左の窓から大家らしきおばさんが、ハリーに気づいて声をかける。「伝言がありますよ」
ハリーはメモを受け取ると、階段に座っている少女の顔をちょっと指でつついてから、足を引きずって階段をあがっていく。腰も痛むようで、左の腰を手でおさえている。
階段の少女は、ハリーの姿をあごをあげて見ている。

天使のような少女からイエスへ

ステンドグラスで描かれたイエスの横顔。直前の見上げる少女の顔とだぶって見える。
りっぱな教会の中で、中年女性たちの聖歌隊が賛美歌を歌い、儀式が行われている。少年が分厚い赤い表紙の本を抱え、掲示台に開いて置く。ドアからハリーが入ってくる。教会席の方を見ると、座席の一番奥にサイファーが座っているのが見える。

サイファーが座る席の前列ベンチに腰掛けるハリー、上体をひねって後ろを向き、サイファーに顔を向ける。
「よく来てくれた」まずサイファーが右手を差し出す。
ハリーはサイファーの手をとって力強く握手する。「わざわざこちらへ?」
「ついでがあって。調査の進み具合も聞きたくてね」サイファーは杖に両手を重ねて置く。
ハリーはポケットからハンカチを取り出し、顔を横に向け鼻をかんでから「実をいうと…」サイファーに顔を近づけて「あまり進んでいません。あれこれ発見しましたが、ジョニーの姿はない」
サイファーは、おやおや、という顔になって「残念だ」
「おどろおどろしい呪い(まじない)と…」ハリーははばかるように一瞬教会の正面を見やってから「3つの死体。3人の死体です。殺されたんですよ」
真顔のハリーに対して、サイファーは微笑んだ目つきになり「殺人か?」
「医師のファウラーは自殺かもしれないが。ブードゥー教のトゥーツは、体のあの部分を口に詰めて窒息死」
サイファーは口に手を当て、たしなめるように「教会の中だ」
ハリーは軽い咳を押し殺して「正直言って、この事件には宗教が絡んでいて気味が悪い。何やらたたりのようで」
「宗教は人間の愛よりも憎しみを募らせるのだ」
「なるほどね。そう言えば、ジョニーの身辺に愛はないようです。僕に悪運をもたらし、つきまとってる。お陰で殺人容疑者にされた。トゥーツはぼくのメモを握って死んだ。」
サイファーはにこやかに「それは聞いたよ。気をつけることだな。3人目の殺人は?」
「ジョニーの社交界での女友達ですよ。マーガレット、ご存じですか?」
サイファーは一瞬視線をよそに向けてから「かすかに」
「かすかに?その言葉にはだまされませんよ。そのお陰でこっちは死ぬ思いなんだ
。ここではっきり答えてください。」
「あの女の存在は知っている」
「彼女に運勢を見てもらった。偽ってジョニーの誕生日を答えた。2月14日のバレンタイン・デーだと。すると彼女は、心臓(ハート)を抉(えぐ)られた。自分の未来は予言不能らしい」
「未来は予測できないものだ。結論は?」
ハリーは間髪を入れずに「ありません。ジョニーは昔の知人を殺し回っている。しかも容疑はぼくにかかる。何だか、空恐ろしくなってきます。だから正直に言ってください」訴えるように「どういうことでしょう」
サイファーは憎らしげな表情をつくり、「ジョニーは私に借りを負っているのだ」また冷静な顔に戻り。「古風だがその片をつけたい。つまり”目には目”ということだ」
ハリーは何言ってんだ?という目になり「クソ野郎め!」
サイファーは、おやまたお下品な言葉を!というように目を見開き、手を顔の横に持ってきて「言葉を慎め」とたしなめると、またにっこりする。
ハリーは教会の正面をしっかり見てから、サイファーの方に向き直り、「教会の中だろうと、遠慮しませんよ。どうせ教会は嫌いなんだ」
サイファーはおや!という反応を見せて「無神論者か?」
「そう。ブルックリンの出身で」
教会の儀式は終わったようだ。
「金でも必要になったら連絡を」サイファーはそれだけ言うとすっと立ち上がる。
ハリーは座ったままサイファーを見上げ、「金はもう結構です。用心しないと頂いた5000ドルも電気椅子の予約金になる。」
サイファーは見下ろしたまま無言。ハリーも無言で見返している。
サイファーはハリーの腕に手をかけて、そっとその場を離れていく。ハリーは座ったまま、目だけで彼を追う。

言葉を慎め

アンチ・クライストのペンタグラムを身につけているサイファーが、面会場所にキリスト教教会を指定してくるのは、なかなか大胆不敵です。ただし祭壇から一番遠い、うしろの席でですが。
これまでのサイファーとハリーのやりとりのように、会話だけ聞くとこれまでの調査の報告ですが、2人の表情のギャップが、サイファーの怪しさを念押ししています。なぜ目がほくそ笑んでる?おっさん、という感じで。ハリーが口に出す〈はしたない言葉〉に、わざとらしく「ここは教会の中だぞ」とたしなめるのがギャグですね。

ハリーは、状況がヤバイので出来ればもう降りたいという気持ちだったのでしょう。
直前のシーンで、階段に白人の金髪の少女が座っています。ちょっと不思議ですよね。
階段をあがっていくハリーを見上げる少女の顔と、教会のステンドグラスに描かれたイエスの顔が、相似形のようにつながっていきます。
彼女は、もしかしたら、天からの使いだったかもしれません。もしここでハリーが仕事を降りていたなら、救いが用意されていた最後のチャンスだったのかもしれません。
しかし仕事を降りることはできませんでした。サイファーに押し切られるように調査続行です。そして、自ら無神論者であることをカムアウトしました。この時サイファーは興味深げな表情をしていましたね。神を信じないということは、その対極にある悪魔も信じないということ。その宗教への無頓着さから、ペンタグラムを見ても特に何も感じないことに繋がっているのかも。

エピファニー3

どしゃぶりの雨が降っている。石造りのアーチ型をした暗い回廊を、ハリーがシルエットになって歩いてくる。
通路を部屋へ向かう途中で煙草を投げ捨てると、なにか見つけたように顔を傾け、一度後ろに顔を向けてから歩み寄る。
部屋のドア前にエピファニーが、しゃがみこんで眠っている。ハリーが腰を下ろしてそっと胸に手を触れると、エピファニーは目を覚まして丸めた背を起こす。
「目がおびえている」やさしくハリーが言う。
「来いよ、中に入ろう」ドアを開けてから、エピファニーに手を添えて立たせる。

「子どもは?」
暗い部屋の中、窓から入る細い明かりで、スリット状に人物が浮かび上がる。
「お隣に預けたの。あそこは14人の子持ちだから安心よ」
目が暗闇に慣れたかのように、部屋の中が見え始める。
「エピファニー、君に別の部屋を取ってもいい」
エピファニーはハリーと少し離れて立って「いいの」
「ぼくは一杯やるよ。君は?」
エピファニーは振り返って、ただ微笑む。
「聞くまでもないな」と言って、ハリーは彼女にもグラスを渡し、肘を少し上にしてグラスを彼女より高くして乾杯をする。
グラスを置いたハリー、切り出すように「考えていたんだが…ママはなぜジョニーと知り合ったのかな?」
白い水差しを手に取り、雨漏りの場所を探すように天井を見上げる。
「とにかくママは夢中だったの」
ハリーは水差しを床に起き、次に洗面器を手に取る。
「でも彼はイヤな奴だった。ママは寂しがってたわ」
ベッドの右側に来ると、洗面器の中にぽつんと雨音をたてる場所があり、洗面器を床に置く。「あんな女たらしのどこに魅力がある?」
ベッドに腰掛けているエピファニーの隣にハリーも座る。
「いつでもそう、女が胸をときめかす男はワルよ」
彼女の顔をハリーは見つめる。
「ママは何て言った?」
「彼のこと?二つのことをね。」
「一つは?」
「ジョニーという男は限りなく悪魔に近いと」
ハリーはベッドの脇に立って煙草をくわえ、柱でマッチを摺り「もう一つは?」
「すてきな愛人だと」
煙草に火をつけながら彼女を見るハリー。手を振ってマッチの火を消すとあごで頷く。視線をちょっとそらして「君はいくつだ?」
エピファニーは顔をあげて「17よ」
「17歳?もう子供がいるとは」
「大人だわ」自分で呆れた、という感じのため息をつく。
「子供の父親は?」
「分からない」
「待って」ハリーは床に置いた洗面器を取って、あらためて天井を見上げる。板面が露わになった穴が5つも開いている。「ひどいな、この部屋」
エピファニーが笑う。
「見ろよ、この雨漏り」
緊張がほぐれた顔になったエピファニーが語り出す。「儀式の時にね…”シュバリエ”という行事で…」
ハリーが「知ってるよ”シボレー”だろ」と言ってあははと笑う。
エピファニーも笑って「”シュバリエ”」と繰り返す。
「車じゃないの?」
「神が乗り移るの」
「神が君を妊娠させたの?やっと分かったよ」と言って濡れたジャケットを脱ぐハリー。
「最高のファックだった」
ハリーは彼女の顔を感心したように見つめる。

ハリーのエピファニーへの感情は、どう見ても「愛情」と呼ぶものでしょう。娘ほど年の離れた美しい女性ですから、ストレートな恋愛感情とは違うかもしれませんが、惹かれていることは確かです。
部屋に2人きりであっても、距離をとって、保護者的な立場でいようとするハリーに対し、エピファニーは大人の男としてハリーを見ています。17歳なのに子どもがいることを、環境的な不遇だと思っていたのに、「最高のファックだった」という彼女の言葉に、性の快楽を知ってる女という面があることを認識するハリー。おじさんの揺れ動く心が、見ていて滑稽ではあるけれど、どきどきしてきます。

彼女はベッドから美しい足を見せながら降り立ち、グラスをサイドボードの上に置くと、ラジオのスイッチを入れる。けだるいブルースが流れ始める。
ハリーは煙草を吸いながら、彼女の姿をうれしそうに見ている。
エピファニーはハリーの方を振り返って「踊りたい?」
ハリーは少年のような笑顔になって「ここで?」
「そうよ」と答えるエピファニーは大人の女という顔つきだ。
ハリーは視線をあちこち向けながら「今朝、犬に噛まれて、うまく動かない」
彼女はベッドに近づいて「そんなの平気だわ」とベッドの上で女の子座りをする。
柱の近くに立っていたハリーは、「じゃ、踊ろう。約束して」と指をさす。
「何を?」
「ニワトリなし」
エピファニーは屈託なく笑う。
彼女をベッドの上に立たせ、自分より顔を高くさせて、ラジオのブルースに会わせて抱き合って踊る。彼女は体をゆすってハリーの頭を抱き、髪をなで、口づけをする。
ベッドの上に優しく彼女を押し倒すハリー。口づけしながら寝返って、彼女が馬乗りになり、ハリーの顔に手を添え、何度も何度も口づけをする。
ラジオからのブルースがけだるく雰囲気を盛り上げる。
洗面器の上に落ちる雨漏りの水滴。
裸で体を重ねる2人。お互いを求め合い口づけを繰り返す。
床に置かれた水差しに落ちる水滴。
ぴんと起った彼女の乳首に吸い付くハリー。
両手を頭の上に投げ出し、快楽を受け入れているエピファニー。
なめらかな肌をしたハリーの背中。
ブルースのけだるい歌声。
天井からの雨漏りが激しくなって、ピストルを濡らす。
ハリーが下になり、騎乗位でのけぞるエピファニー。
壁にも雨漏りが流れてくる。
床の洗面器に水がいっぱいになっても水滴が降り続ける。
スタンドライトの傘にも流れるように落ちてくる雨漏り。
腰をピストンさせるハリーの背中にも水滴が落ちる。
水差しにも水が満たされ、水滴がどんどん激しく落ちてくる。
そこに、赤い血が混ざる。
激しく腰をグラインドさせるハリーの背中にも血がしたたり落ちてくる。
洗面器にも天井から血が降ってきている。
叫ぶエピファニー。
大きく腰を動かすハリー。
洗面器と水差しにも血が激しく落ちてきている。
水滴の落ちる音が、心臓の鼓動と重なっていく。
サキソフォンのテーマが流れ始める。
──足を揃えて座るシスターの前を、2人の男の足が通り過ぎる。
壁にも血が流れ落ちる。
──壁に飛び散った血を、洗い落としている黒ずくめの人物。
──左には蝋燭の光。右にある椅子には洗面器が乗っている。
ハリーの肉体は腰だけでなく全身でグラインドしているように激しく動く。
──左にある蝋燭にカメラが向くと、回る換気扇の影が映る。
──若い兵隊の肩に、背中から手をかける。
絶叫するエピファニー。
──回る換気扇。
──ワインサップの襟を掴み、顔に恐怖が走る。
──回る換気扇。
──回転するエレベーターの滑車。
──降下していくエレベーターの影に男の叫び声が重なる。
絶叫するエピファニー。
──降下するエレベーターから見る上方へ遠ざかる壁。
──炎を前に乱交する儀式。
──のけぞるエピファニーの裸体。
──炎を前に乱交する。
エピファニーの首を締めつけ、揺さぶるハリー。
──女が仰向けで人々の上を持ち上げられていく。
血まみれのベッドでSEXをつづけるハリーとエピファニー。
──壁に血しぶきが飛ぶ。
血まみれのベッドでSEXをつづけるハリーとエピファニー。
──壁に飛び散った血を、洗い落としている黒ずくめの人物。
──洗面器に満たされる血に染まった水。
エピファニーの絶叫。ハリーに首を絞められている。
彼女は体をよじってハリーをはねのけようとしている。
──儀式で跳ね回る裸の男女。
エピファニーに覆い被さって首を絞めるハリー。
絶叫するエピファニー。
陰部を押しつけているハリーの尻。
激しく絶叫するエピファニー。

首を締めつけているハリーを、その絶叫が正気に戻す。
ハリーは、彼女から手を離し、自分の顔を覆う。
軽くキスをしてから、体を離すハリー。
息も絶え絶えのエピファニー。
彼女に背を向けてベッドに腰掛けるハリー。
そんなハリーを見つめるエピファニー。息が荒い。自分の首に両手をあてる。
ハリーはベッド脇にある洗面台にある鏡に向かって、左手でパンチをする。
鏡には大きくひびが入る。
落ち着いてきたエピファニー。

血の雨が降る中でのSEX

先に仕掛けてきたのはエピファニーの方でした。ハリーにとっては、その方が垣根を越えやすかったはずです。相手の求めに応えただけ、というエクスキュースが成り立つので。
しかしハリーの愛し方は、雨漏りの水滴が血に変わりはじめると、しだいに凶暴化し、絶頂を迎えるために彼女の首を絞める行為に出ます。
1943年のニューヨーク、ブードゥーの儀式、壁に飛び散った血を洗い落とす黒ずくめの人影、のフラッシュバックがハリーを襲い、天井から血が降り注ぐという幻影も加わります。フラッシュバックと幻影が同時に起こるのは初めてですね。
すべての共通点は「血」。1943年のニューヨークも血につながる記憶です。
さまざまなイメージが交錯する中で続けられる、血まみれのハリーとエピファニーの姿は、かなりインパクトの強い映像です。幻影の中にいるハリーは、これまで見てきた根の優しいハリーと同一人物なのか。あまりに激しい腰使いと首を絞めるという行為に、ただただ意外性を感じるばかりです。実際、表に見せている姿からはイメージできない性的嗜好を持っている人はいますから、そんな裏の姿を見てしまったかのような気まずささえ感じます。
エピファニーの絶叫がようやくハリーの耳に届き、あわてて首から手を離して自分の顔を覆う姿を見ると、ほっとすると同時にハリーの人格統一性に疑問が交錯してきますよね。

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