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パンフの表紙
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ジョー・ブラックをよろしく 1999-01-02

2/3 これまでクセのある役柄が多かったブラッド・ピットが、正統的な美形を演じているこの映画。
でもね、僕は「セブン」の時のブラピが好みなんですよ。映画自体のささくれだったような雰囲気も気に入ってたし。だから、キレイすぎる「ジョー・ブラック」のブラピには、ちょっと照れくさいような感触があったんです。
予想通り、最初に登場するコーヒーショップでの好青年姿には、照れるものがありました。だけど数分後、衝撃的な交通事故のシーンとともに、好青年すぎるブラピは姿を消してくれます(この数分の好青年姿がいいという女性も多いのですが)。
外見は好青年のままだけど、中身は気が遠くなるほどの時間を存在してきた死神。立ち居振る舞いの高貴さと、人間社会がはじめてというイノセントな表情。これがけっこう良かったんですよ。この仕草、いただきましょう!

ブラピの死神という設定を、子供だましのおとぎ話にしなかった点が、この映画の優れたところ。大人の社会、父と娘の間にある愛情、そんな<人間が生きること>をしっかり描くことで、死神の存在を肯定させていくのは見事です。
その役目を担っていた一翼が、アンソニー・ホプキンス演じる大企業の社長ウィリアム・パリッシュ。
この映画のアンソニー・ホプキンスはすごくいいですよ。「日の名残り」に並ぶ名演技だったと思います。
人徳というのは、その人と一緒にいることで、にじみ感じるものですよね。その人徳が、スクリーンからちゃんと伝わってくるんです。死神に付きまとわれても我を失わず、娘への愛情を忘れない、自分がしっかりとある男。考えてみれば、そんな人間こそ理想をカタチにしただけのウソっぽい存在になってしまいがちです。でもさすがに「サー」の称号を持つホプキンス、ジェントルな気配と威厳で絶対的な説得力を役に与えていました。

ファンタジーを成立させたもう一翼、それはプロダクション・デザイナーのダンテ・フィレッティの創り出した美術。
夢のように豪華な世界の中で、夢のようなお話に生命力を与えていました。
「エイジ・オブ・イノセント」をはじめ、貴族系映画の美術にかけては、右に出る者がいないフィレッティ。フェリーニの作品でたたきあげた人だけあります。
「ジョー・ブラック」では、ニューヨークの5thアベニューにあるパリッシュのペントハウスと、別荘、そしてオフィスの内装に彼の力が発揮されています。とにかく品のいい豪華さにうっとりです。なにげなく壁にかけてある絵画が、印象派の油絵でなくMoMAにあるような近代美術なんですよね。
絵画ばかりでなく、照明効果も含めて内装の凝りようは素晴らしかった。ペントハウス内のプールなんて、それだけで庶民にとっては<夢物語>ですからね。豪華さのレベルは、「プリティ・ウーマン」どころじゃないです。ビスコンティの映画に近いんですが、テイストはハリウッド映画なんです。

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